[00:11.86]唄:IA [00:36.86]下北駅を降りてすぐ右へ行ったところに [00:40.66]なんか狭い階段があってその下でホラ [00:44.74] [00:45.57]釘バットがひとつ、ぽつりと置き去りにしてあって [00:49.48]「こんちは」って声かけたら 「こんちは」って返ってきた [00:54.07]あ、こいつ 喋るタイプのバットだな… [00:57.03]って思ったから とりあえず家に持ち帰るのさ [01:02.80]これでしばらくは時間もつぶせるだろと [01:07.21]簡単に考えてしまったこと自体が 運の尽きさ [01:15.40]退屈な日々の中で僕は何度もそう願っていたよ [01:19.67]案外平和な世界で少しの何かが起こることを [01:24.15]傍若無人な過去に捕らわれて動けない自分ですら [01:28.36]隠してしまえるようなこと どこかで期待したよ [01:32.63] [01:40.59]それから何かが 動き出したのは明らかだった [01:44.62]部屋に何者か、侵入の痕跡が… [01:49.16]あれだけ口数多かった この釘バットだって [01:53.29]最近じゃもう めっきり喋らなくなってしまった [01:57.91]あ、こいつ 何か隠してるんだな… [02:00.95]って思ったから とりあえずゴミとして 捨てちゃおう [02:06.50]最低な日々の中で僕は 何度も話しかけたよ [02:10.72]いざ手放す瞬間になると なんだか思い切れなくて [02:15.16]気づきゃバットを握りしめたまま 僕は走り出していたよ [02:19.41]こうなりゃ何の組織だろうと なんでも逃げ切ってやる [02:24.72] [02:59.58]彼女を追いつめたのは かつていじめっ子だったA子さん [03:03.77]見下した目でただ バットを寄越しなさい と言い放つ [03:08.01]折れそうになる心の中で 僕は何度も願っていたよ [03:12.37]いつかコイツを殴り倒せる日が訪れることを [03:16.67]ふざけた感じの声で もういいよ とバットが言う [03:20.98]そんな声も耳に届かず 僕はただ [03:25.31]息を整え 前を見据えてバットを握る [03:29.64]負けフラグを横目に 僕は叫ぶのさ [03:41.07] [03:42.90]何度も願っているんだ