5月7日、終発36号 ひしめく人の波が流れ着く鉄籠 べルが止み すっと 動き出していく 過ぎていく光景は 文字通り 「電子の集合体」- つくりもの- 暗い地下道を鮮やかに彩って 囚われた時間の苦しみをあやすように 進んでく 静かに旅を行く人乗せ 冷たい鉄の籠は暖かな光で 暗闇を照らし 都市-まち-へ向かっていく 狭い座席 誰かが忘れた 真っ白なレース 濡れたハンカチーフ 人はいつも何かを抱えて 籠に乗り進む そんなノスタルジック 色褪せぬもの 冷たい鉄の籠は意思のない空箱 でも何故かそこに溢れる温もり 暗い地下道進み53分の旅 ゆっくりと止まり 扉を開いた 冷たい籠は聞いた「忘れ物、ないですか?」 頷いて人は背を向けて籠を去っていく そして籠は 空の寂しげな体で帰ってく