[00:02.62]包丁人ルビィ [00:07.71]ルビィ「うひぃ、ひぃ……ふぅ……えーーいっ!」 [00:11.90]曜、果南「危ないー!」 [00:14.21]ルビィ「ひぃーー!」 [00:16.12]果南「ちょっ、何してるのルビィちゃん!」 [00:18.38]ルビィ「え……ルビィ、果南さんに言われたとおりに」 [00:22.15]果南「言ってない言ってない、包丁を逆手に持ってなんて」 [00:26.17]ルビィ「ええ!?じゃあ……こう?」 [00:29.47]曜、果南「危なーーい!」 [00:31.53]ルビィ「いやっ!」 [00:33.09]曜「なんで葉のほうを持つの!?」 [00:35.21]ルビィ「え?だって、違うって言われたから、えくっ……だ、だから……えくっ……へへええええぇーー……」 [00:43.48]曜「うっ、ごめん、その……怒ったわけじゃ……」 [00:47.19]果南「怒ってるよ」 [00:48.42]曜「って、果南ちゃん?」 [00:49.84]果南「ルビィちゃん、そんなことで、立派な職人になれると思ってるの?」 [00:54.56]ルビィ「えぇー!?」 [00:55.78]曜「職人って……」 [00:57.77]果南「いい、ルビィちゃん?職人にとって、道具は命なの、自分自身なの、魂なのっ!」 [01:05.48]ルビィ「は、はい?」 [01:07.65]果南「ルビィちゃんには、その魂が欠けているの」 [01:10.75]ルビィ「ええい!?た、魂が欠けてるの?じゃあ、今、ルビィって……ゾンビーーっ!」 [01:19.05]曜「そういうことを言ってるんじゃないと思うけど……」 [01:21.84]果南「特訓よルビィちゃん!立派な板前になるために」 [01:25.49]ルビィ「はい!」 [01:26.38]曜「いやいや、目指してないよね、板前」 [01:28.98]果南「それくらいの気持ちがないとだめってこと」 [01:31.93]果南「お刺身もシンプルだけど、ほんとに奥が深い料理なんだから」 [01:36.29]果南「『魚をうまくする』と書いて、『すし』と読むんだから」 [01:39.46]曜「って、寿司になってるし」 [01:42.02]果南「さあ、ルビィちゃん。まずは、包丁を磨ぐところから始めるよ」 [01:46.52]ルビィ「はい!」 [01:47.20]曜「いやいや、もう板前修業はいいから」 [01:50.02]ルビィ「じゃあ、なに修業?」 [01:52.87]曜「なに修業もしなくていいから」 [01:55.41]果南「じゃあ曜ちゃんが修業するーー」 [01:57.03]曜「しないからっ!って言うかこれ、そういう集まりじゃないから」 [02:01.28]果南「曜ちゃんーー」 [02:02.21]曜「きゃっー……えっ……果南……ちゃん?」 [02:07.40]果南「曜ちゃん。どうしてそんなムキになって邪魔しようとするの?」 [02:11.59]曜「へええーー!?」 [02:13.40]果南「ひょっとして、あれ?包丁になんかいやな思い出でもあるの?」 [02:18.38]曜「いや……ないけど……」 [02:21.63]果南「なんか、人には言えない、包丁に纏わるトラウマがあるの?幼少時に、なんか体験したみたいな」 [02:29.44]曜「だからないって!って言うか知ってるでしょう、幼馴染みなんだから。そういうことなかったって」 [02:36.06]果南「じゃあ、なんで包丁を毛嫌いするの?」 [02:38.46]曜「毛嫌いしてないよ。どうしちゃったの?果南ちゃん」 [02:42.71]果南「今宵の包丁は、血に飢えている」 [02:45.66]曜「へええーー!?」 [02:47.07]果南「って言うのは冗談で、ほら、包丁って料理の基本でしょう?」 [02:51.60]果南「一応年長者として、怪我とかしないように基本だけでも教えようかなって」 [02:57.06]曜「はっ、そういうこと~」 [02:59.55]ルビィ「うわ、やっぱり果南さん、頼りになる」 [03:02.69]曜「え、えへへへ、そうだよね。私、ひょっとして、普段あんまりぼけないこの三人だから、」 [03:08.52]曜「果南ちゃんがボケ役にやってるのかなって」 [03:11.16]果南「そんなわけないでしょう。包丁を使ってるんだもの、ぼけてたら危ないんじゃない」 [03:15.75]曜「そ、そうだよね。ま、普通はそうだよね」 [03:20.10]果南「と、いうわけで。ちっとも面白くはないと思うけど、今回は真面目な包丁の使い方教室ってことで」 [03:28.81]曜、ルビィ「はーい」 [03:30.02]曜「って言うか、私普通に料理とかするから、まあ包丁も」 [03:34.07]果南「曜ちゃん」 [03:35.07]曜「えっ、な……なに?」 [03:38.58]果南「舐めてると痛い目見るよ、包丁だけに」 [03:41.98]曜「や、やっぱり今日の果南ちゃん、かなりボケ入ってない?」 [03:46.49]果南「でも、確かに曜ちゃんは料理とか得意だしね」 [03:49.82]果南「よし、じゃあ、ここは、板前見習いのルビィちゃんの集中特訓だ!」 [03:54.85]ルビィ「よ、よろしくお願いします」 [03:57.12]曜「だから、板前目指してないって!」 [03:59.59]果南「さあルビィちゃん、『包丁』の『包』は?」 [04:03.94]ルビィ「え?」 [04:05.53]果南「だから、『包丁』の『包』、は?」 [04:08.64]ルビィ「え、え、え、えっと、えっとーー曜ちゃん!」 [04:13.27]果南「だめ、人に聞いたら。曜ちゃんも教えちゃだめだよ」 [04:17.00]曜「教える以前に、私もわからないけど……」 [04:20.01]果南「ほらルビィちゃん。『包丁』の『包』、基本だよ」 [04:23.87]ルビィ「基本なの?」 [04:25.20]果南「基本なの」 [04:26.54]ルビィ「え、えーと、ほ、ほ……」 [04:30.89]果南「十、九、……六(カントし続ける)」 [04:32.56]曜「カントだ、始まった……」 [04:35.17]ルビィ「えーと、えーと……」 [04:37.51]果南「五四三二!」 [04:38.31]曜「早くなった!?」 [04:39.35]果南「一!」 [04:40.14]ルビィ「ほ、ほうちょうのほは、ホップステップジャンプのほーーっ!」 [04:49.49]果南「ルビィちゃん」 [04:50.63]ルビィ「は、はい?」 [04:52.93]果南「あのさ、ひょっとして……ふざけてる?」 [04:56.77]ルビィ「へええ!?」 [04:57.87]曜「ちょ、ちょっ果南ちゃん、ルビィちゃんも、その……がんばった?わけだし……」 [05:03.87]果南「曜ちゃん」 [05:04.97]曜「うっ、は、はい(正立)」 [05:07.81]果南「代わりに曜ちゃんが言ってあげて。『包丁』の『包』が、何なのか?」 [05:12.94]曜「……へ?」 [05:13.94]果南「曜ちゃんはわかってるよね、先輩だし。料理も得意なんだしー」 [05:18.98]曜「え、えっと……えーっと……ほ、ほ、ほっ……ホームランー!……とか」 [05:29.49]果南「曜ちゃん」 [05:30.71]曜「は、はい!違いました、ごめんなさい」 [05:33.40]果南「二人とも本気になってよ。包丁の気持ちになってよーっ」 [05:38.48]曜、ルビィ「包丁の気持ち?」 [05:40.88]果南「ルビィちゃんも曜ちゃんも、包丁をただの包丁としか思ってないでしょう」 [05:45.54]ルビィ「へえ!?」 [05:46.49]曜「いや、だって……包丁だし……」 [05:50.81]果南「包丁はね、命を頂く、その形なの!」 [05:55.86]曜、ルビィ「命を頂くその形?」 [05:58.96]果南「そう、『包丁』の『包』って言う感じ。『つつむ』って言う字でしょう?」 [06:05.01]ルビィ「わっ!」 [06:05.92]曜「言われてみれば……」 [06:07.41]果南「命を包み込む、そういう重いものを包丁は持っているのーー」 [06:12.21]果南「軽々しく手にしちゃいけないものなのっ!」 [06:15.82]ルビィ「は、はい……」 [06:17.34]曜「いや、その中途半端にリアリティがって、何が何だか……」 [06:22.18]ルビィ「は、わかったっ!」 [06:23.81]曜「え?」 [06:24.77]ルビィ「ルビィ、わかったよ!果南さん!」 [06:27.61]曜「え?え、って言うか、何がわかったの?」 [06:30.83]ルビィ「『包丁』の『包』は……」 [06:32.28]曜「あ、そこに戻る……」 [06:34.36]ルビィ「『包丁』の『包』は、ほっぺたのほーーっ!」 [06:38.30]果南「違いまーす」 [06:39.20]ルビィ「え、え……じ、じ、じゃあ……う、う、うえぇ、えっ……ほっきょくぐまのほーーっ!」 [06:46.47]果南「違いまーす」 [06:47.70]ルビィ「えーー……じ、じゃあ……じゃあ……ううぅ……ほうこうてんかんのほーーっ!」 [06:53.97]果南「ルビィちゃん!」 [06:55.48]ルビィ「は……はい?」 [06:57.70]果南「包丁の『ほ』は、『ホスピタリティー』の『ホ』」 [07:02.63]曜、ルビィ「『ホスピタリティー』?」 [07:04.52]果南「そう、これからニッポンに求められてるのは、『ホスピタリティー』なの」 [07:08.88]果南「包丁一本にホスピタリティを込めるのがONEの心なの」 [07:12.48]果南「ホスピタリティーに始まり、ホスピタリティーに終わるのが『ホスピタリティー』なの。分かる?このホスピタリティーっ!」 [07:19.53]曜「……へー?」 [07:20.45]果南「曜ちゃんは、分かってるよね」 [07:22.88]曜「へ?えっと……たぶん?」 [07:26.61]果南「じゃあ、ちゃんと言ってみてー、ホスピタリティーって十回」 [07:30.25]曜「言わないよ、っていうか、果南ちゃんだってちゃんとわかってるの?……ほすーぴたりてぃー?」 [07:35.64]果南「決まってるでしょう?ほ、ほすーやうぇい」 [07:39.18]曜「う、急に言えてないし」 [07:40.52]果南「とにかく、包丁は理屈じゃないの、魂なの! [07:44.71]ルビィ「たましい、そうだよね!たましいがだいじだよね!たましいがないとゾンビだもんね!」 [07:50.90]曜「そのネタ、まだ引っ張ってたの?」 [07:52.74]果南「ルビィちゃんっ」 [07:53.83]ルビィ「はい!」 [07:55.06]果南「包丁人になりたいかーーー!」 [07:57.65]ルビィ「おおぉーーー!」 [07:58.89]曜「いや、なに包丁人ってーっ」 [08:01.33]果南「ルビィちゃん、『人』という字は、人が包丁を斜めに持ってたって出来ているの」 [08:07.58]ルビィ「ほ、ほ、ほーーーっ!」 [08:09.34]曜「いや、なにその新説?」 [08:11.50]果南「さあ、ルビィちゃん!」 [08:12.86]ルビィ「はい!」 [08:13.56]果南「包丁をー!」 [08:14.27]ルビィ「持ちます!」 [08:15.08]果南「持ちませーん!」 [08:15.68]ルビィ「え……?」 [08:17.26]果南「まずは包丁を、見る!」 [08:19.50]ルビィ「みる!」 [08:20.57]果南「そう、見て学ぶのがニッポン、そして、東洋の学びの基本なの」 [08:25.87]ルビィ「は、はい……う、ひぃ、みる……みる……!」 [08:32.16]曜「いや、包丁を見て、どうなるの?」 [08:35.12]果南「包丁が入ってくる」 [08:36.53]曜「入ってくる!?」 [08:37.79]果南「そう、包丁をじっと見ることで、包丁が自分に入ってきて、そして、包丁と一つになっているの」 [08:46.19]ルビィ「へ、深いね」 [08:47.79]曜「っていうか、ちょっと微妙に怖いけど……」 [08:50.66]果南「さあ、包丁と一つになった?」 [08:53.50]ルビィ「……へひ……な……なった……かも」 [08:58.52]果南「よし!じゃあ始めるよ」 [09:00.41]ルビィ「よろしくお願いしますっ!」 [09:02.09]曜「あの……」 [09:02.95]果南「まずは三枚おろしから、この捕れ立て新鮮の鯵を捌いてもらうよ」 [09:08.28]ルビィ「ひ、うひぃ……は、はい……う、ひ、うぃーー」 [09:12.75]曜「あのー、ちょっとー……」 [09:14.58]ルビィ「ひぃー……魚が、こっち見たよー」 [09:17.83]果南「それはそだって、捕れ立てだもん」 [09:20.72]ルビィ「ひぇー……」 [09:21.90]曜「あのね、だから、ちょっとー……」 [09:23.71]ルビィ「ひやぁ、あ、は、はねたよー」 [09:26.64]果南「それはそだよ、捕れ立てだもの」 [09:29.50]ルビィ「口が、ぱくぱくしてるっ」 [09:31.74]果南「捕れ立てだものー」 [09:33.54]ルビィ「鱗がついたー!」 [09:34.77]果南「捕れ立てだものー」 [09:36.40]ルビィ「立った!」 [09:37.04]果南「捕れ立てだものー」 [09:38.91]ルビィ「自分で歩いて、扉を開けて、外に出てバスに乗って、船をちゃーたーして故郷の海にーっ!」 [09:44.85]曜「そんな魚はいなーーい!」 [09:47.12]ルビィ「ひいぃーー!ご、ごめんなさい、そういうことになれば、お魚を捌かなくてもよくなるかもって」 [09:57.54]曜「いいよ」 [09:58.51]ルビィ「え?」 [09:59.72]曜「だから。捌かなくて、いいよ」 [10:02.97]ルビィ「……い、いいの?」 [10:04.98]曜「っていうかこれって、クリスマスパーティーの料理を作ろうっていう集まりだよね」 [10:09.94]果南「そうだよ」 [10:10.99]ルビィ「そうだったの!?」 [10:11.87]曜「いや、ルビィちゃんなんの集まりだと思ってたの?」 [10:14.66]ルビィ「ルビィはその、果南さんの包丁教室だと」 [10:18.13]果南「そうだよ」 [10:18.73]曜「そうじゃないよ」 [10:19.94]果南「そういう面もあるってこと、包丁は料理の基本だから」 [10:24.28]曜「けど、クリスマスケーキを作るのに、三枚おろしは必要ないでしょう?」 [10:28.84]果南「必要あるよ。ほら、間にクリームを挟むために、ケーキを横に三枚にーっ」 [10:35.38]曜「それは、三枚おろしとは言わないって」 [10:37.82]果南「とにかく包丁は必要だよ。とくに、今回はパーティーの場所が場所だし」 [10:43.95]曜「……へ?」 [10:44.79]ルビィ「場所と包丁となにか関係があるの?」 [10:47.63]果南「あるよ。だから、ルビィちゃん!」 [10:49.83]ルビィ「は、はい」 [10:51.10]果南「パーティーの時には、ちゃんと体に晒しを巻いて、そこに包丁を刺していてね」 [10:56.90]ルビィ「へーーーーいっ!?」 [10:58.58]曜「なに、その昔の任侠映画みたいなファッション!」 [11:01.57]果南「もしものためだよ」 [11:03.34]曜「どんな、もしも、なの!?」 [11:05.65]果南「何が起こってもいいように?護身用?」 [11:08.80]曜「ないよ!包丁を護身用に使うようなことは」 [11:12.29]果南「あるってー」 [11:13.40]曜「ないってー!」 [11:14.73]果南「そんなこと言って……二人ども、知ってるでしょう」 [11:18.41]曜、ルビィ「へ?」 [11:20.08]果南「今度のパーティー、どこでやるか」 [11:23.33]ルビィ「どこで?」 [11:24.67]曜「知ってるけど、別に危ないところじゃ……」 [11:27.79]果南「危ないよ!だって、ヤバコーヒーだもん」 [11:35.16]曜「…………へ?……あの……それはひょっとして、ヤバコーヒーだから……やばい!みたいな?」 [11:43.67]果南「さあ、ルビィちゃん!特訓だよー」 [11:46.27]ルビィ「あ、は、は、はいっ!」 [11:47.68]曜「ちょっと、果南ちゃん?」 [11:49.24]果南「ちがうちがう、包丁の握り方はそうじゃなくてー」 [11:52.89]ルビィ「え?じゃ、じゃー……こう?」 [11:55.62]曜、果南「危なーーーーい!」 [11:58.15]ルビィ「びぎいいいぃーっ!」 [11:59.53]果南「やばーーーーい!」 [12:01.60]曜「だからやばくないって!ヤバコーヒーはーーー!」 [12:07.72]<おわり> [12:09.08]お聞きになってありがとうございます