[00:40.59]或る夏、影を伸ばすような夕暮れ [00:43.89]カラスが鳥居の上で聞いた噂 [00:46.13]耳打つ子供の声 夏祭り、揺ラリ [00:50.82]裏山の小道、トンネルの向こうに [00:54.38]ポツリと古び眠る屋敷があって [00:57.38]首吊った少女の霊が夜な夜な出るそうだ [01:01.19]好奇心で立ち入る人達 [01:04.40]「言っただろ、出るはずない」と [01:06.72]軋む階段 揺れる [01:09.71]誰も気付いてはくれないや [01:12.50]「私、死んでなんかない。」って [01:14.79]暗がりに浸かって [01:16.09]そっと強がって澄ましても [01:18.26]過ごした日々と共に [01:20.78]止まった針は埃被って [01:23.37]また声枯らして今日が終わって [01:25.84]明日が窓に映り込んでも [01:29.35]私は此処にいます [01:55.12]季節を束ねた虫の聲 夕立 [02:00.52]流れた灯篭 神様の悪戯のよう [02:14.10]迷い込んできた灰色猫 [02:18.42]「あなたも私が見えないの?」 [02:20.80]背を撫でようとした右手は虚しく [02:24.15]するり抜け、空を掻いた [02:26.59]「私、死んでいたのかな」って [02:29.16]膝を抱えて 過去の糸を手繰っても [02:32.30]些細な辛いことや家族の顔も思い出せなくて [02:37.36]遠くで灯りだす家並みの明りや [02:40.61]咲いた打ち上げ花火を [02:43.48]眺め、今を誤魔化す [03:14.70]夏の終わり 過ぎ去った [03:18.20]子供たちの噂も薄れ [03:22.37]漂っては薫る線香の煙と一緒に [03:26.80]姿は透け、やがて消えゆく [03:31.23]私はただの一夏の噂だった [03:34.91]六月始めに生まれ [03:37.55]八月終わりに遠退いた [03:40.14]意識は影法師になった [03:43.11]誰も見つけてはくれなかったけれど [03:45.85]記憶の片隅にある、かつての淡い日々の [03:51.19]一部となって残り続ける [03:53.97]もう切らした向日葵の歌 [03:56.24]蝉しぐれも亡き [03:58.10]夏の匂いだけ残る屋敷に [04:01.04]少女はもういないだろう