海角七号 第一封 友子、太陽がすっかり海に沈んだ。 これで、ほんとうに台灣島が見えなくなってしまった。 君はまだあそこに立ってるのかい。 友子、許しておくれ。 この臆病な僕を、二人のことを決して認めなかった僕を。 どんなふうに、君に惹かれるんだったっけ。 君は髪型(かみがた)の規則をやぶるし、よく僕を怒らせる子だったね。 友子、君は意地張りで、新しい物好きで。でも、どうしょうもないぐらい、君に戀をしまった。 だけど、君がやっと卒業したとき、ぼくたちは戦爭に敗れた。 僕は敗戦國の國民だ。貴族のように傲慢だったぼくたちは、一瞬にして、罪人(ざいにん)のくび枷をかけられた。 貧しいいち教師の僕は、どうして民族の罪を背負うえよ? 時代の宿命は時代の罪、そして、僕は、貧しい教師にすぎない。 君を愛していても、諦めなければならなかった。