[00:33.62]私というこの存在は或いは一つの逆説です [00:36.37]白熱電球の淡い発作 六畳一間の亡霊です [00:39.49]清冽なまでの人の群れ 空蝉うつせみを踏む不快な音 [00:42.69]二束三文の世界律を彫りつけたような街の色 [00:52.02]私の言葉の限界が私の世界の限界です [00:54.83]言葉は無感動の羅列 謂わば虚むなしさの警鐘 [00:57.86]野ざらしにされた夢の路線 来し方行く末錆び付いて [01:00.98]淘汰され浮かび上がる体系 消えてしまえればいいなんて [01:04.68]宵の口 夜気を漕ぎ 風を結い 泳ぐ空 [01:08.19]堕ちていく 墜ちていく 儚くも美しく [01:12.10]止め処もなく 意味もなく 絶え間なく続く詩 [01:16.09]畔あぜの花 酸すえた過去 悲しみすら追い越して [01:20.48]嗚呼 くだらないその幸福に引きずられて生きて [01:23.29]その後にどれほどのものが残るというのでしょう [01:25.93]身を裂くような苦悩とともにその日まで歩き続けようか [01:29.26]その後に自分の言葉が生きてくれるのなら [01:34.23]永久の街をしとどに濡らす赫い流星雨        [01:43.00]割れた硝子細工の空 さよならの音をたてた [01:52.78]私というこの現象は一個の無価値の反証です [01:55.49]形而上的パノラマ空想 六畳一間の幻です     [01:58.61]檻の向こうで嗤う群衆 それは内側か?外側か? [02:01.61]瞬間の悪を映す鏡面 白昼に枯れた花の青 [02:05.30]神様仏様如何様 確率論ただ絡まって [02:07.79]暗示され崩れ落ちる系譜 どうせ他人事と独り言 [02:10.95]書物の中の無垢な憧憬 言葉が生み出す永遠性 [02:14.06]ぽつねんと街にいつも独り この空漠を埋めておくれ [02:17.47]宵の中 時を喰み 星を呑む 琥珀の灯 [02:21.18]溶けていく 溶けていく あまりにも美しく [02:25.00]寄る辺もなく淀みもなく 果てしなく響く詩 [02:28.85]一本の樹の下で救いの手を待ちわびた [02:33.07]嗚呼 同じような幸福の中に身を委ね [02:36.03]安寧を(むさぼ)っては生きて何を成し得るのでしょう  [02:38.89]凍えるような孤独とともにその日まで歌って歩こう [02:42.11]その声が誰かの心を温めるのならば [02:57.27]悲しみを乗り越えた数だけ人は強くなれるんだなんて    [03:01.05]そんな言葉は間違いだろう [03:03.63]悲しいことには慣れてるからなんて笑顔で言えてしまうだなんて [03:07.10]それが一番かなしいだろう [03:12.36]嗚呼 くだらないその幸福に引きずられて生きて [03:15.08]その後にどれほどのものが残るというのでしょう [03:18.01]身を裂くような苦悩とともにその日まで歩き続けようか [03:21.25]その後に自分の言葉が生きてくれるのなら [03:24.55]嗚呼 莫迦げたことだと笑いとばしてしまえたなら [03:27.38]どれほどにどれほどに楽に生きられたのでしょうか [03:30.11]それでもいつか自分の軌跡が誰かの標となるように [03:33.35]曖昧に曖昧に今を歌っていたいのです